2022年の1-3月は私もまだ米国株にはわずかに伸びしろはあると思っていたのですが、最近ではめっきり米国株に弱気になりました。
次の景気後退が来るまでにまだ時間があるなら一時的に株価が回復する場面もあると思いますが、私は今の状態ならその株価回復にも乗らないつもりです。
では、一体何が起こったら株に強気に転じるのかを書いて置こうと思います。
米国株に強気になる条件
- 米国株に強気になるには(1)「FRBが金融引き締めを停止する」と「(2)ジャンク債のイールドスプレッドがピークをつけて低下に転じる」が必要。
- もしも景気後退時に見られる株価の大幅下落が始まってしまったら、(3)「10年国債利回りの急低下が終わること」と(4)「恐怖指数の急上昇が終わること」も必要
FRBの金融引締め停止
私の中で、米国株に強気になるための第一の条件は「中央銀行のFRBが金融引き締めを止めること」です。
2022年はFRBの金融引締め(利上げと量的引締め)の悪影響を受けて米国株が大きく下落していますが、この金融政策が止まらないことには米国株に好転はないと思われます。
ただし、今のところその兆しはまだありません。
アメリカの高すぎる物価上昇を止めるために金融引き締めをしているのですが、その効果はまだ見えていないからです。
それどころか最近少し気になっているのは、5月のアメリカの消費者物価がまた上がっている気配があることです。
クリーブランド連銀のサイトでは消費者物価の伸びの予想値を平日毎日公開しているのですが、最近は物価の伸びが再びわずかに勢いづいている様子がわかります。
出典:クリーブランド連銀 – Inflation Nowcasting
高いインフレ率を見ていると、まだまだFRBは金融引き締めを止めることはないだろうなと感じます。
ジャンク債のイールドスプレッドが縮小する
しかし、FRBの金融引き締めが止まっても、そのとき既にアメリカの景気の減速が止められないほど悪化していた場合には、不況に突入して株価の急落が起こってしまいます。
なので、FRBが金融引き締めが止まっても、景気後退(≒不況)が迫っていないかを確認する必要があります。
私の場合、不況が近づいているかどうかは債権市場の動きを見ることが多いです。債権市場には株式市場よりも慎重な投資家が多く、危険が近づくと素早く安全な資産に逃げる傾向があるからです。
次の図はジャンク債と米国債の利回りの差をグラフにしたものですが、景気後退が近づくと投資家はリスクの高いジャンク債を売って安全な米国債を買うので、景気が悪化するとこのグラフは上昇します。
FRBが金融引き締めが止めたり金融緩和に転じてもこのグラフが上昇を続けているなら、景気は既に坂を転げ落ちている可能性があり、まだ株に強気になってはいけない危険な状態である可能性が高いです。
例えば、2020年3月の新型コロナウイルスの流行初期にはFRBは緊急利下げをしましたが、このグラフ(ジャンク債イールドスプレッド)の上昇は止まらずに、株価の下落は加速しました。
一方で、その1年前のまだ金融引き締めをしていた頃(2019年1月)、FRBのパウエル議長が利上げの停止の可能性を発言した後は、ジャンク債のイールドスプレッドは下落をはじめて景気後退は回避され、株価もその後1年間上昇をしました。
なので、FRBが金融引き締めを止めたタイミングで景気後退に向かっていくのか、それとも回避できそうなのかを知るためにジャンク債のイールドスプレッドという数字は活用できそうです。
さいごに
以上をまとめると、FRBが金融引き締め止めて、ジャンク債イールドスプレッドも低下したら、株に強気になっても良いと私は思います。
ただし、恐らくこの展開は期待薄です。
既に現在は2018末と同じ程度までジャンク債のイールドスプレッドは上昇しているのに、まだインフレが続いていて金融引き締めを止められそうにないからです。
なので、FRBが金融引き締めを止める頃には、既に景気は坂を転げ落ちている展開になると思います。
その場合には、株価も大きな下落が始まっているはずですが、その場合の株価の底打ちの兆しとしては「ジャンク債イールドスプレッド」だけでなく、「10年国債利回り」や「恐怖指数がピークをつけて下落に転じること」など他にも使えるデータがいくつかあります。
詳しいことを知りたい方は、新型コロナウイルスが流行して株価急落した中で書いた次の記事をあわせて読んでみてください。
底打ちのシグナルが出始めた米国株。それでもさらなる下げの恐れ。
この記事ではリーマンショック時に株に先行して底打ちしたいくつかの指標を使って、現時点でどこまで株価が底に近づいているかを調べてみました。一部では底打ちのシグナルが出ているものの、シグナル発生後にさらに株価の下落した過去のデータもあるので、もうしばらくは警戒が解けない状況が続きそうです。
上の記事は株価がほとんど底値をつけているときに書いたものなので、次の景気後退での株価の下落時にも参考になると思います。