7月のアメリカ製造業の景況指数(景気の強さを数値化したもの)が発表されたので、この記事で振り返って見たいと思います。
アメリカの景気拡大は7月も力強く続きましたが、拡大ペースは少しずつゆっくりになっているようです。このブログでは何度も言ってきたように、アメリカの製造業の景気拡大のペースは3月をピークに緩やかになっているようです。
そして、今回の発表されたデータを詳しく見ていると「物価上昇圧力が和らぎ始めたかな」と感じる点がいくつか見られました。
そろそろアメリカのインフレ率の上昇もピークをつけて落ち着くのかも知れません。
この記事のポイント
- アメリカの製造業の景気は拡大しているが、そのペースは3月をピークに緩やかになっている。
- また、インフレ率が上昇しやすい環境が和らいでいる兆しが見られた。需要も仕入れ価格の上昇ペースも弱まり、部品の入荷遅れはわずかに改善されている。
- 今後数ヶ月でアメリカのインフレ率がいったん落ち着くかも知れない。
やはり米製造業は3月にピークをつけていた
ISMという団体は毎月アメリカの製造業に景気アンケート調査をして、翌月はじめに結果を公表しています。
毎月の景気の強さは数値化されて、50を超えると景気拡大を意味するのですが、2021年7月も景気指数は59.5と節目の50を大きく超え、景気拡大が続いている様子が見えてきました。
しかし、上にグラフをみるとわかるように、アメリカの製造業の景気がもっとも良かったのは2021年3月で、それから景気拡大のペースは緩やかに減少しているように見えます。
先月もISMの結果を伝える記事(以下の記事)に書きましたが、やはりアメリカの景気のピークは過ぎたようです。
やはり米製造業の景気はピークをつけたように見えます。【ISM製造業】
新しい月に変わって、米製造業の景気の強さを測る重要なデータがISMから発表されましたが、こちらを見てもやはり6月の景気は強かったです。ただ、ISMのデータを見る限りはアメリカの景気は3月にピークをつけたように見えます。そして、インフレが進みやすい状況はまだ続いている点は注意が必要です。
ただ、3月がアメリカ製造業の景気のピークだったという話は、既に先月から見えていたことの再確認に過ぎません。
ここからは7月のデータになって、新たに見えてきたことについて触れます。
物価上昇しやすい環境に変化の兆し
7月分のISMのデータを詳しく見ると分かってくるのは、物価が上昇しやすい環境にも変化がみられているという点です。
もう少し具体的には「仕入れ価格の伸びの鈍化」「製造業への需要のかげり」「部品の入荷遅れのわずかな解消」が見られます。
まず仕入れ価格についてですが、依然として上昇は続いているものの、そのペースはわずかに緩やかになっているようです。
また、受注残(注文を受け付けて、まだ出荷できていないもの)の伸びも鈍化して、製造業への需要はわずかに収まりつつある印象があります。
そして、アップルのiPhoneなどにも影響が出始めて、最近何かと話題に事欠かない部品の入荷遅延についてですが、こちらもわずかに改善の兆しが見られています。
これらのデータはすべて、インフレが進みやすい環境がそろそろ一段落するかも知れないという変化の兆しを見せているように感じます。
2021年に入ってからアメリカでは勢いよく物価が上昇していますが、そろそろピークをつけるかも知れません。
さいごに
この記事では、「アメリカの製造業の景気は力強い拡大が続いているものの、拡大ペースは3月をピークに弱まっていること」「製造業の景気を見る限り、インフレが進みやすい環境がそろそろ一段落する兆しが出始めている」という、2つのことについて書いてきました。
最後に少しだけ補足をしておくと、インフレが進みやすい環境に改善が見られていますが、だからといって今のアメリカのインフレの問題がまもなく解決されると決めつけることはできないと思っています。
アメリカの高いインフレ率が景気や株価に悪影響を与えるかも知れないと考えている一部の投資家は、今のアメリカのインフレ率を押し上げている要因のうち、数ヶ月のうちにいくつかは解消されることを見越しています。その上で、一時的なインフレ要因が消えた後に、アメリカのインフレ率が何%で落ち着くのかを問題視しています。
一時的なインフレ要因が消えたあとにパンデミック前の水準(前年比2%)まで下がるなら健全です。
問題は消費者物価がパンデミック前の物価を大きく超える水準(例:3%〜4%)で下げ止まった場合で、この場合は国債は売られるはずなので、株価への影響も心配しなければならなくなります。
現時点でその恐れはあまりないのですが、インフレがどの程度まで下がってくれるのかは注意深く見ていく必要があります。先月私は既に石油株を手放しましたが、もしもインフレ率がほとんど下がらない場合には、再度インフレに強い銘柄への投資も検討する必要がありそうです。
今週、エクソンモービルなどの石油株を売却しました
今週、石油株を手放しました。売却したのはエクソンモービル(XOM)、シェブロン(CVX)、エネルギー株ETF(VDE)です。アメリカの石油株は消費者物価と似たような動きをする傾向がありますが、2021年のアメリカの消費者物価はそろそろ一時的にピークをつけるのではないかと思ったので、このタイミングで売却をしています。