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アメリカ求人件数は低下トレンドが続くも、雇用はまだ強い

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8月の求人件数が発表になりましたが、結果は予想以上に雇用が強いという結果になっています。

8月のデータなので過去の姿を見ているだけという指摘はあるのですが、それにしてもアメリカの雇用が弱まるペースはかなり遅いです。

この求人件数が発表になってから、市場は年内の利上げを50%近くまで折り込み始めています。

この記事のポイント

  • 8月の求人件数は予想を上回る伸びを見せた。前月の低迷もあいまって、一月の増加幅は約2年ぶりの高水準だった。
  • 求人件数の低下トレンドは続いているものの減速はかなりゆっくり。このままではコロナ前の求人率に戻るのは24年後半になりそう。
  • 利上げ停止の見方が優勢だった市場の予想でも変化がみられ、年内の利上げ確率がほぼ五分五分まで上昇した。

予想以上に増えていた求人件数

8月のアメリカの求人件数が発表になりました。

この数字が低下しないことには金融引き締めが終わらないので低い数字が出てくれることが望ましいのですが、残念ながら予想を上回る結果になっています。

  • 予想:880万件
  • 結果:961万件
  • 前回:883万件から892万件に上方修正

グラフで見るとより分かるかも知れません。

8月の求人件数はピョンとジャンプしたように増えてしまっています。前回が大きく下振れたせいもあるかも知れませんが、今月の伸びは大きく感じます。

最初に話をしたように求人件数が大きく減らないと利上げ終了が見えてきません。というわけで、今回の結果を受けて市場の年内の政策金利は「利上げ終了派」と「利上げがまだある派」でほぼ五分五分になりました。

これにより最近売られていた米国債はさらに売られ、米国債に比べればいくらか耐えていた米国株もこの日は下落をする展開になりました。

求人件数の低下トレンドはまだ続いているが

さて、市場を見ていると悪い反応が見られますが、数少ない良い材料も見ていきたいと思います。

8月の求人数は増えていたとはいえ、やはり求人数の下落傾向はちゃんと続いているということです。

もう一度、過去数年の求人件数の推移を見てみますが、2022年から始まった求人件数の低下トレンドはまだ崩れていなさそうです。

この求人件数はどの程度まで下がればいいのでしょうか。また、このままの低下トレンドが続くならいつ頃にその理想的な状態にたどり着くのでしょうか。

FRBがコロナ前のインフレ率を目指しているなら、雇用環境も同じくコロナ前の状態が望ましいはずです。

具体的に言うと、求人率がコロナ前の4%半ばになれば良いのではないかと思っています。

このままの勢いで求人率の下落トレンドが続くとするなら4.5%程度になるまでには、どれくらい時間がかかるのかスプレットシートをたたいて計算すると2024年7月という結果が出ます。

来年の7月ですか。・・・なるほど、長い長い時間がかかりそうですね。

数少ない良い材料として低下傾向が続いていることを示そうとしていたはずですが、話を続けるとその低下ペースはあまりにも遅いという悪い材料が簡単に見つかってしまいます。

しばらく前に同じ分析をした時にはもう少し早くコロナ前の求人率も戻る予定だったはずですが、これはさすがに参りました。

ちなみに

さて、最後に2024年7月という時期で気になった点をあげておきます。

実は2024年7月というのは、別の重要なイベントが予想されている時期でもあります。この時期に市場は利下げが始まると思っているのです。

どちらも現時点での予想なのであやふやなものなのですが、どちらも同じような時期というのは変な気がします。

金利の影響は遅れて経済にやってくるはずなので、求人率がコロナ前の状態に戻るまで引き締めを続けていたら、景気を冷やしすぎてしまう(オーバーキルをしてしまう)ことになります。

きっと、求人率予想か利下げ予想のどちらかは少なくとも間違っているのでしょう。

ここからは完全に妄想の域なのですが、アメリカの市場は2024年7月まで何のショックも受けずに頑強なままでいられることはないだろうと勝手に思っています。

3月から予想していたように銀行の破綻の問題はまだ終わっていないという意見も変えていません。最近の米国債の投げ売りは、一部の銀行で流動性(ドル)が不足して国債の含み損が確定することを覚悟で現金化しているようにさえ見えます。

恐らく2024年7月よりもずっと前に銀行の破綻が再燃すれば、強い雇用も金融引き締めもどちらも大きく変わる可能性があります。

あまり根拠のない話はさておき、もうしばらくすれば、政策金利の引き上げの悪影響が経済に及ぶことは確かです(下記事参照)。

>>アメリカ利上げの悪影響はまだ企業利益に及んでいない

今のアメリカはやたらと景気が底堅く雇用も強いという見方をされていますが、変化があるとすればそう遠くない時期にやってくるはずです。


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