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新型コロナの影響を受けない安定企業。ノボ・ノルディスクが好決算【20年1-3月期】

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ノボ・ノルディスクは創業100年近い製薬会社なのですが、この企業を知っている人はそんなに多くないです。

デンマークの企業であること、さらに糖尿病など一部の特定の病気に絞った治療薬を作っているので知名度は低いのですが、長年この業界をリードする薬を作っている歴史ある企業です。

糖尿病は完治しないので生きているかぎり長く治療が続く上に、糖尿病は長期的に世界中で拡大すると危惧されているのでノボ・ノルディスクのような企業は需要があると見て、私も2013年からノボ・ノルディスクを主力銘柄にしています。

一度他のライバル企業との競争に勝てば安定した収益が得られるため、長年S&P500を圧倒してきた銘柄でもあります。

近年の決算は売上の大半を占める米国で薬価引き下げなどの影響を受けて、売上低迷に泣かされていたのですが、今期は文句なしの好決算でした。

この記事のポイント

  • ノボ・ノルディスクの1-3月期は売上も一株利益も共に16%上昇で、久々に二桁成長を見せた。
  • 売上急成長の理由は、新型コロナウイルス前の在庫調整のため。外出禁止令の前や輸送網が乱れる前に駆け込み注文で7%分の売上が上昇したと発表。
  • 2020年の業績見通しをほぼそのまま維持した。多くの企業が新型コロナウイルス環境で業績見通しを引き下げる中、かなり高評価。
  • 来期は今期の売上反動減が米国とヨーロッパに見られる恐れがある。しかし、既に新型ウイルスの流行と収束を経験した中国を見る限り、ノボへの影響は見られない。新型コロナウイルスの影響の悪影響をほぼ受けない数少ない銘柄の1つ。

2020年1-3月期結果


ノボ・ノルディスクの今期の決算は盤石でした。

数年前から低迷していた売上・利益は成長が加速していて、文句なしの好決算です。

2020年1-3月結果

  • 一株利益:5.05デンマーククローネ(前年比+16%)
  • 収益:338.8億デンマーククローネ(前年比+16%)

売上は前年比+16%成長していて、今期だけとはいえマイクロソフトやグーグルに比べても成長率が高かったです。約100年間、糖尿病ばかり研究して薬を作っている変哲もない企業が、ハイテク企業と匹敵する成長を見せているのは心強いです。

単位:10億クローネ 1Q20 1Q19 前年比
収益 33.9 29.3 16%
営業利益 16.3 14.2 14%
営業利益率 48% 49%
純利益 11.1 10.4 6%
一株利益 5.05 4.36 16%

この記事を書いている5月15日時点で、S&P500は年初から-11%で推移していますが、ノボ・ノルディスクは+11%です。いい感じでアウトパフォームしています。

久々の売上2桁成長に回復


この数年間、低い売上成長率に悩んでいたノボ・ノルディスクですが、久々に売上も利益も成長率が2桁を超えました。

近年は売上の半分を占める米国の薬価(インスリン)引き下げなどの影響を受けて業績が低迷していましたが、米国の売上が回復した結果、成長が加速しています。

売上成長の要因はコロナ流行前の駆け込み需要

今回の売上の急成長の要因は、コロナウイルス流行前の駆け込み需要があったためです。

糖尿病の治療薬は切らしてしまうとじわじわと命に影響が出てくる薬が多いので、外出禁止前に多めに薬の処方したり、輸送網が乱れる前に注文が殺到したようです。

ノボ・ノルディスク社は、こうした駆け込み需要が今期の前年成長率を+7%分おしあげたと見ているようです。

中国を見る限り新型コロナウイルスの影響はなし


以下が近年のノボ・ノルディスクの地域別に見た売上成長率ですが、どの地域でも一様に売上が上昇しています。

20年1-3月期 収益(10億DKK) 前年比
米国 14.8 12%
ヨーロッパ 9.7 22%
中国 3.8 13%
その他 4.8 18%
世界合計 33.1 16%

米国やヨーロッパは駆け込み需要で売上が上昇したので、その分を差し引いて見ないといけませんが、注目は新型コロナウイルスの流行と収束を経験した中国の売上です。

2019年第4四半期に売上+12%が、2020年第1四半期では+13%とほぼ変わらない売上になっています。実際には、新規患者への処方が減ったりしているようですが、新型コロナウイルス前後でもほぼ変わらない業績をキープできている点はかなり好印象です。

ガイダンスは変わらず


だぶん、ノボ・ノルディスクは新型コロナウイルスの悪影響をほとんど受けない珍しい企業です。

ノボ社の自信の現れは、2020年通年業績見通しを維持したことからも伺えます。ほとんどの企業が、年初に発表した業績見通しを撤回したり、大幅に引き下げている中で、業績の維持はかなり強気な姿勢です。

ノボ・ノルディスク2020年ガイダンス

  • 収益:前年比+3-6%(変更なし)
  • 営業利益:前年比1-5%(変更なし)

もともと無理のない業績見通しを設定しているように見えます。その上1-3月期で収益+16%、営業利益+14%の好成績をたたき出して貯金をだいぶ作ったので、年間の業績見通しを引き下げなくても達成ができると経営陣も考えているのでしょう。

ジョンソン&ジョンソンの決算を見ていても感じましたが、製薬会社はあまり新型コロナウイルスの影響を受けていない印象があります。コロナ前後で変わらないビジネスこそが、これらの企業の強みです。

>>ジョンソン&ジョンソン、コロナでも好決算【20年1Q決算】

今回のノボ社の決算でわずかに残念だと感じているのは、ノボ・ノルディスクの期待の新薬の飲む糖尿病治療薬Rybelsus(経口セマグルチド)の販売がまだ米国で始まったばかりで、まだほとんど伸びていないことです。

>>ノボ・ノルディスク、期待の新薬「経口セマグルチド」が米で承認。

欧州や日本での新薬の承認判断も2020年4-6月へと予定がずれ込んでしまっています。本来であれば米国以外も続々と処方が進んでほしいところですが、これからの巻き返しに期待です。


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