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ペイパル、Facebook主導のデジタル通貨Libraから脱退。新技術に不寛容なアメリカのリスク。

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Facebookのデジタル通貨Libraからペイパルが脱退

2019年6月にFacebookがデジタル通貨のLibraを発表した時、多くの人々は新しい時代来ると感じました。ただし、新しい時代に対する反応は人ぞれぞれでした。

私は現金が抱える多くの無駄から開放された生産的な未来を描いたのですが、多く人にとっては従来のお金ではない「インチキなまがい物」が世の中にあふれる不愉快な未来に見えたようです。特に、トランプ大統領やFRBメンバーをはじめ、規制をする側の政府からは強い反発がありました。

参考記事:FRB議長がFacebook仮想通貨を牽制も、過度に規制すべきでない理由。

アメリカだけでなくヨーロッパの幅広い金融当局からの反発もあり、デジタル通貨のLibraに対して厳しい逆風が吹いていましたが、そんな中ペイパルは残念ながら、Libraからの脱退を決めたようです。

Facebookが主導して立ち上げたLibraを運営する非営利団体のパートナーの一覧から、paypalのロゴが消えています。

Paypalは、社名にもなっているオンライン決済サービスPaypalやアメリカでシェアが高い個人間送金アプリvenmoを持っている企業だったので、Libraとしては大きな痛手を被ったことになります。

技術が法律に追いつかない現状

ただ責められるべきはPaypalでも、Facebookでもないと思います。これだけ政府が不満を述べている中、PaypalとしてもなかなかLibraに残りづらかったのは容易に想像つきます。

この件に限らずなのですが、政府の考えや法律が技術に追いついていない例はたくさんあります。

Amazonやグーグルがドローン配送を目指しつつも規制に苦労して数年間アメリカでのサービス展開が遅れていたり、自動運転の分野では車の安全性に関する既存の法律が人の前にハンドルがあることを前提に作られているせいで、自動運転の車が法律違反になるなど、次世代のチャンスの芽が残念ながら潰れている例があります。

参考記事:自動運転を阻む規制の壁〜ガートナー先進技術ハイプ曲線2019を読む。

参考記事:アマゾンやGoogle、アメリカでのドローン配送に一歩前進。

もちろん、政府は熟慮の上で仮想通貨もドローンも自動運転にも強い規制がかかった状態にしていて、私のほうが浅はかだった場合も十分にあると思いますが、試しにやってみる環境すら限定されている点はやはり問題がある気がします。

アメリカ企業と経済へのわずかなリスク

さて、なぜ投資ブログなのに法律の話をしているかというと、今のアメリカの経済を支えているのは大手のIT企業なのに、アメリカの政治や法律がそのITの発展を妨げてしまっていては、長期的に成長が減速するリスクがあると思っているからです。

もっと具体的に言うと、今のままあらゆる分野で政治家や政府に理解されずに過度に強い規制がかかっていては、アメリカのIT企業の技術が世界の企業から時代遅れになる恐れがあると思います。

フィンテックの分野ではシリコンバレーよりもロンドンのほうが進んでいると言われています。また仮想通貨に特化した取り組みでは、世界中の企業がスイスに集まって先進的な取り組みをしています。さらに、ドローンの分野でGoogleはアメリカで厳しい規制を受けたので、オーストラリアなどアメリカ外で技術を磨いたことは有名です。

既にアメリカの規制がきつくて、アメリカでは新しい技術が育たない分野がいくつもあります。

現時点では疑いなくアメリカ企業の技術や革新性は世界一ですが、AIなどの先進技術で世界のトップに立ちたい中国企業が政府の援助を受けて追い上げて来ている話もあります。

新しいチャンスの芽を育てる新しい技術への理解がないと、アメリカ企業やアメリカ経済全体への長期的に影響があるのかなと考えてしまいます。

今は全く気にしなくてもいいリスクだとは思うのですが、長い目でみるとアメリカ人の政治と政府の技術の理解度や不寛容さはアメリカの成長の芽を摘み取りかねないリスクだなとも感じます。


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