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P&G予想を超える決算。商品コスト増で9月からの値上げも発表【21年1-3月期】

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P&Gの2021年1-3月期の決算発表がありましたが、売上も一株利益も予想を超える業績で内容は良かったと思います。

決算資料を眺めながら、少し記憶にとどめておこうと思った点が2つありました。

一点目は新型コロナウイルスの流行時に好調だった製品の売上成長率が少し鈍化していることです。世界ではウイルスはまだまだ猛威を奮っていますが、売上成長の面では既にピークを過ぎたようです。

二点目に気になったのは、9月から一部製品の値上げを発表したことです。2021年はアメリカではそこそこインフレ率が高くなることが予想されていますが、P&Gなどの生活必需品でも値上げは始まっているようです。

この記事のポイント

  • 売上も一株利益もともにアナリスト予想を上回る決算だった。
  • 製品カテゴリー毎の売上成長率を見ていると、ウイルス流行時に好調だった洗剤や消毒などのホームケア用品の成長率は落ち着いてきている。パンデミックの売上への影響は薄れている。
  • 商品コストが上がっているために、2021年9月から一部の製品で一桁%の値上げが発表された。同業社も値上げを発表するなど、アメリカではインフレが少しずつ進行している。

予想超えのまずまずの業績だった1-3月期


2021年1-3月期(21年第3四半期)のP&Gの業績は、売上も一株利益も予想を上回る決算でした。

  • 売上:予想179億ドルに対して、181億ドル(予想超え、前年比5.2%)
  • 一株利益:予想1.19ドルに対して、1.26ドル(予想超え)
  • オーガニックセールス:予想前年比+3.7%に対して、前年比+4(予想超え)

P&Gのような成熟している企業が、5%の売上成長を遂げているのは立派です。

新型コロナウイルスの好影響を受けていた最近のP&Gにとっては少し控え目な成長率だったかも知れませんが、長年株を持っている投資家からするとP&Gにしてはありがたい高成長が続いています。

P&Gの好不調を判断するには、オーガニックセールスと呼ばれる買収・売却や為替の影響を除いた売上を見ることが多いです。

今期のオーガニックセールス成長率は4%で前期からは成長率は落ち着きましたが、それでも予想をわずかに超えるまずまずの出来でした。

部門別売上


今期はP&Gの中で売れている製品に少し変化が見られました。

具体的には、今まで新型コロナの影響で売れていたホームケア製品の売上成長が鈍り、その代わりにウイルス流行直後には落ち込んでいた美容品の売上が戻ってくるなど、コロナの影響が薄れているようにみえます。

P&Gの製品カテゴリ別の売上を見る前に、どの製品がどこに入っているのかわかりにくいので以下に整理しておきます。

P&Gの製品カテゴリ

  • 美容:ヘアケア(シャンプーやスタイリング)とスキンケア(美容・化粧品)を扱う部門。パンテーンやSK-IIなど。
  • グルーミング:シェービングを扱う部門。ジレットやブラウンなど。
  • ヘルスケア:オーラルケアとパーソナルヘルスケア(ビタミン、サプリメント、のど飴)を扱う部門。オーラルB、のど飴ビックス。
  • ホームケア:ファブリックケア(洗剤やファブリーズ)、ホームケア(食器洗い洗剤、掃除用具)を扱う部門。アリエール、ジョイ、ファブリーズなど。
  • ベビー・女性・ファミリーケア用品:幼児や女性、介護用品を扱う部門。ブランドはパンパースなど。
単位:10億ドル 売上 構成比 前年比
美容 $3.3B 18% +9%
グルーミング $1.4B 8% +4%
ヘルスケア $2.4B 13% +4%
ホーム $6.3B 35% +8%
ベビー・女性・ファミリー用品 $4.6B 25% 0%
Total P&G $18.1B 100% +5%

上記で見ると、ホームケア製品はP&Gの売上の35%を占める最も規模が大きいカテゴリになっています。

ホームケアはコロナが流行してから、人々の衛生意識の高まりと在宅時間が増えた影響で大きく売りあげを伸ばしていました。しかし、今期はその伸びが少し緩やかになった模様です。

反対に、コロナ流行時には美容品の売上が低迷していたのですが、それが今期は復活してきています。アメリカを中心にコロナの影響は少しずつ薄れてきているのを数字から感じます。

9月から一部製品の値上げを発表

P&Gの決算で知ったのですが、2021年9月からP&Gはベビー・女性・ファミリー製品カテゴリなどの一部製品の値上げをするようです。

2021年になってから商品の原材料や輸送費などの商品コストが上がっているようで、その影響をうけて一桁半ばから後半のパーセンテージで値上げを発表しました。

このブログでは既に何度も伝えているように、2021年のアメリカではインフレが心配されています。そして、3月時点でほぼ全ての業種の製造業で仕入れ価格が高騰しています。

>>アメリカ製造業の景況感、37年ぶりの高水準に。

>>2021年に入ってから急上昇が続くアメリカの生産者物価指数

P&Gの同業者のキンバリー・クラークも値上げを発表していることから、いよいよ消費者に価格の転嫁が始まっているのを感じます。

今の中央銀行FRBやアメリカの財務長官は、2021年にインフレが進んでも一時的だと言っていますが、もしもインフレが想定以上に長く強いものになってしまった場合にはとても注意が必要です。

中央銀行のFRBが「まずい」と判断した時には、P&Gのように5ヶ月先の値上げを今決めているように、他の企業も数ヶ月から半年先まで値上げも決まっているものと思われます。その上、インフレを食い止める政策を実施してもそれが効果を発揮するには、さらにまた時間がかかります。

このタイムラグは市場の投資家を慌てさせるには十分な時間になると思うので、今後もインフレには注意を向けたいと思います。

まとめ

この記事ではP&Gの2021年1-3月期の決算を見ていきました。

売上も一株利益もどちらも予想を超えて、まずまずの成績を残したと思います。コロナで好影響を受けていたホームケア製品の成長率が落ちてきたことで、売上成長率は前期よりも落ち着いてきましたが、まだ好調は続いているようです。

9月に値上げをしたとしても、同業他社も同じような値上げを計画していることから競争力はそれほど落ちず(販売数量を大きく落とさずに)に値上げができるのではないかと私は思っています。

値上げはP&Gの株主としては心配な材料というより売上げアップの期待のほうが大きいかも知れません。心配があるとすれば、アメリカで価格の転嫁が消費者まで届きつつある点で、国全体でインフレがどこまで進行するのかは注意してみたいと思います。

この記事で書いた時点で、私は長期保有でP&G株を少量持っています。

今の株価はそれほど安いわけではないので、まだこの株は買い増す予定はありませんが、何かの原因で割高感が解消されるようなことがあれば、再度長期保有目的で買い増しをしたいと思います。

2021年4月にP&Gは65年連続で配当が増加することが決まったので、長期保有には向いている銘柄だと思います。

企業名 連続増配年数
P&G 65年
3M 63年
コカ・コーラ 59年
ジョンソン&ジョンソン 59年
アルトリアグループ 51年
ペプシコ 48年
ウォルマート 48年
マクドナルド 45年
エクソンモービル 38年
AT&T 36年

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