ここでは、今週発表されたアメリカの8月の小売売上高について書いていきます。
以前、こちらの記事で8月の個人消費は堅調というFRBのコメントを書いていた通り、8月は前月比で予想以上に小売は伸びていました。
しかし、問題なのは7月分です。今回の発表で7月のデータが大きく下方修正されて、7-9月期で消費はまたしても低成長になりそうな気配がしています。
この記事のポイント
- 8月の小売売上高は前月比+0.3%で、事前の予想を上回る堅調な伸びだった。
- しかし、7月分は前月比横ばいから、マイナス0.4%へと大きく下方修正された。
- 個人消費が伸び悩む懸念から、7-9月期のGDP予想は下方修正されている。
堅調な伸びを見せた8月のアメリカ小売売上高
先日発表されたアメリカの8月の小売売上高を確認していきます。
8月小売売上高(名目)
- 予想:前月比-0.1%
- 結果:前月比+0.3%
- 前回修正値:前月比0.0%からマイナス0.4%へ下方修正
事前の予想では売上高は7月から0.1%マイナスになると予想されていましたが、プラス0.3%の上昇で良い結果となりました。
今月もガソリン価格(前月比マイナス4.2%)や家具(前月比マイナス1.3)が低迷した一方で、前月調子を落としていた車販売が反動で高い成長を見せたこともあり(前月比+2.8%)、全体としてプラスに推移したようです。
8月の結果はそこまで悪くない内容でした。
懸念点は2つです。1つ目は7月の結果の下方修正がかなり大きかったこと、2つ目は7-9月期の個人消費の伸びが低成長かマイナス成長で終わる恐れが出始めたことです。
7月のデータは大きく下方修正
今回の発表でインパクトがあったのは、8月ではなく7月のデータです。修正前の小売売上高は横ばいの前月比0.0%成長でしたが、同マイナス0.4%にまで低下しています。
マイナス0.4%というと大きな数字に聞こえませんが、一年間このペースが続いた場合には年率マイナス4.7%にもなる大きなマイナス成長です。
この下方修正によって、今まで順調に右肩上がりに伸びていたアメリカの小売売上高がついに頭打ちになった可能性があります。
下の図のように8月の小売売上高は7月の減少が響いて、6月時点よりも低い水準にとどまっています。
7-9月の個人消費に低成長の恐れ
低成長が見込まれている今のアメリカにとって7月分の下方修正の影響はかなり大きいかったようで、アメリカの第3四半期(7-9月期)のGDP予想も引き下げられました。
アトランタ連銀が発表している第3四半期のGDP予想(GDPNow)が、前期比年率1.5%から0.5%へと下がっています。
2022年のアメリカは第1四半期も第2四半期ともに実質マイナス成長で、 第3四半期こそはプラス成長に回復すると見込まれていたのですが、だんだんと雲行きが怪しくなってきました。
言うまでもないですが、アメリカの景気が悪くなることは企業業績が悪化することを意味します。
株は(1)金利と(2)企業業績の2つで株価が決まりますが、金利は上昇して株価にとって悪い状況が続いています。そこに企業利益も悪化するとなれば、株価はさらに下を目指すことになりかねません。
現段階ではアナリストたちの予想は企業業績の悪化を織り込んでいないようなので、今後数ヶ月から半年はこの企業業績予想の悪化が進展しないか注視する必要がありそうです。