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10月の米学生ローン返済再開の影響は小さい模様

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アメリカではパンデミックが発生した2020年3月から学生ローンの返済が免除されていましたが、今月になって返済が再開されています。

返済が再開されれば消費は落ち込むと事前に言われていたのですが、どうも今のところ影響は小さそうです。

この記事のポイント

  • 10月からアメリカでは学生ローンの返済が再開された。
  • しかし、事前に予想されたほど消費の落ち込みは見られない。NY連銀も8月時点の消費動向調査の結果を公開して、以前の予想ほど消費は落ち込まないという結論を出している。

警戒された学生ローンの返済再開

アメリカでの学生ローンの返済再開がどのくらい消費を圧迫して、経済成長を鈍らせるかについては以前からさまざまな人が議論していました。

過去のデータを見てみると、2017年の学生ローン返済額は毎月平均で393ドル(年間4716ドル)とそこそこな規模があったため、返済が再開されたら消費にはそれなりのダメージがあると予想されていました。

例えば、第一生命経済研究所は、10-12月期の実質GDP成長率が前期比年率で1.8ポイント低下すると試算しています。

予想ほど落ち込まないアメリカの消費

しかし、10月になってもアメリカの消費はそれほど落ち込んでいないようです。

下のグラフは、Readbookが集計した米国の既存店売上高の前年比データなのですが、9月と10月前半の消費は夏場に比べてむしろ勢いを増しているように見えます。

上のグラフの右端は10月2週目までデータがあるのですが、小売売上高の伸びは加速していて、学生ローンの支払い再開後も消費は衰えていないことがわかります。

また、ニューヨーク連銀は18日、学生ローンの影響はこれまで想定されていたよりも小さい可能性があるというレポートを発表しています。

このレポートでは返済再開前の8月時点で学生ローンの利用者に消費調査を行っていて、その結果を次のように報告しています。

調査結果を見てわかるのは、学生ローンの返済再開が消費に与える影響は2011年8月の支出から0.1ポイント減と比較的小さく、学生ローンの延滞率は大流行前の水準に戻っていくということだ。

大事なのは上の文章の前半部分で、要するに学生ローンの返済が再開されても消費に与える影響は小さそうだということです。

事前に心配されていた消費低迷はどこに行ってしまったのでしょうか。原因として考えられるものはいくつかあります。

一つは、パンデミック時に蓄えた貯蓄はまだ残っていたことです。最近のアメリカの所得データの改定がありましたが、実はまだ家計に支払い能力が残っていたようです。

>>アメリカがパンデミック時に蓄えた貯蓄は実はまだ底をついていない模様

また、支払いに困る低所得者層には救済措置もあるようで「時給が15ドル以下の低所得の借り手は、たとえ10月から支払いができなくなったとしても、返済を免除される制度」があると言います(CNBC)。

そして、もしも「学生ローンは返済が滞っても1年間は信用機関に報告されず、信用情報が傷つかない」という制度があったため、無理に普段の消費を減らしてまで返済する必要はないと受け取られているようです。

さいごに

どうも、10月に学生ローンがアメリカの消費を冷やすという見立ては修正する必要がありそうです。

やはり、アメリカの消費を冷やすのは失業率の高まりなのかもしれません。一時的ではない失業者は前年比で増加傾向にあるので遠くない将来に消費が弱まる予兆はありますが、このデータからいつ消費が弱まるかを当てるのは至難の技です。

返済再開時期が明確に決まっていた学生ローンとちがって、雇用の弱まりはいつからと時期が決まっているものではないので、見通しは悪くなってしまいました。


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