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低金利時代で見えたオールシーズンズ・ポートフォリオの限界

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昨日、3月18日に私は持っていたアメリカ国債を全て売却しました。

いままではレイ・ダリオ氏が個人投資家にすすめているポートフォリオを参考に、2018年から景気後退に備えたポートフォリオとして、株・国債・金に分散投資していましたが、これを解除しました。

レイ・ダリオ氏の推奨ポートフォリオをそのまま実践したわけではあリませんでしたが、このポートフォリオは株の急落時を抑えてくれる強力なものでした。ただし、実際にやってみた結果、限界も見えてきました。

レイ・ダリオ氏のポートフォリオが有効なことはもちろんですが、私が今回やってみて気づいた難点も共有したいと思います。

この記事のポイント

  • レイ・ダリオ氏が個人投資家に推奨している「オールシーズンズ・ポートフォリオ」は、あらゆる経済状況で安定したリターンを上げるために設計されたポートフォリオ。
  • 2020年の新型コロナウイルスで荒れた相場でも、ほとんど資産は下落しなかった。
  • しかし、長期金利がゼロに近づくと、ポートフォリオ全体で資産を下げる場面が見られた。
  • (10年後になるかもしれないが)次に景気後退局面が来た場合も、オールシーズンズ・ポートフォリオは採用する価値がある。ただし、金利がゼロに近づいた場合には、ポートフォリオの解除を検討する必要がある。

今回の株の急落局面はまだ現在進行系なので総括するのはまだ早いです。

でも、現時点で見えてきたオールシーズンズ・ポートフォリオの発見をこの記事にメモしておき、近い将来に総括するときに振り返りたいと思います。

そもそもオールシーズンズ・ポートフォリオとは

アンソニー・ロビンズ著「世界のエリート投資家は何を考えているのか、何を見て動くのか」の中で、レイ・ダリオ氏が個人投資家に進めている、ポートフォリオです。

資産を株・国債・金・商品に分散して持ち、好況・不況・インフレ・デフレなどあらゆる経済の状況でも損失を最小限に抑えて安定してリターンを残せるように保有率が考えられています。

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

>>レイダリオが個人投資家に推奨するオールシーズンズ・ポートフォリオ

2020年2月の株価急落でもリターンを出したオールシーズンズ

2020年の2月下旬からアメリカ株は急落しましたが、この急落局面でのポートフォリオのリターンを調べると、安定したリターンを上げられていることがわかります。

19年12月-20年2月 オールシーズンズ S&P500
リターン +3.68% -8.29%

オールシーズンズ・ポートフォリオ見えた欠点

ただし、3月になってアメリカの長期金利がゼロにまで近づくと、少しずつ変化がでてきました。

2月までは、株が下がる日には国債が上昇してポートフォリオ全体の価値が上がるのを防いでいましたが、段々とカバーできない日が見え始めました。

>>【参考記事】米国株、大幅下落。株の下落をカバーできなくなりつつある米国債。

それでもリターンは悪くなかったのですが、長期国債が買われすぎで利回りがゼロに近づくと、いよいよ株の下落を国債でカバーできなくなる日が目立ちました。

オールシーズンズポートフォリオでも、長期金利がゼロに近づいた時には、さすがに下落するようです。

2020年3月に起こったこと

オールシーズンズ・ポートフォリオのこの欠点をもう少し深く理解するために、「2020年3月に何が起こったのか」を書いておきます。

そもそもオールシーズンズ・ポートフォリオは、成長率やインフレ率が上昇しても下がっても、何かしらの資産がリターンを上げることで、どんな場面でもリターンを上げるようになっています。

オールシーズンズ・ポートフォリオがリターンを上げる仕組み

  • 想定よりも経済が成長すれば、株と金と商品が上昇。
  • 想定よりも経済が低迷すれば、国債価格が上昇。
  • 想定よりもインフレ率上昇が進めば、金と商品が上昇。
  • 想定よりもインフレ率低下が進めば、株式・国債価格が上昇。

4つもあるとよくわからなくなるので、次は2020年3月の状況に当てはめて、何が起こったかを考えていきましょう。

2020年3月は「新型コロナウイルスで経済が急減速」、「期待インフレ率の低下」の2つが起こりました。

(「期待インフレの低下」についてはあまり注目されていませんが、市場の期待インフレ率を見てみると3月に急低下していることがわかります。)

この状況では本当なら次の2つから主に国債の価格上昇が起こって、ポートフォリオのリターンが上がるはずでした。

  • 想定よりも経済が低迷するので、国債価格が上昇するはず。
  • 想定よりもインフレ率低下が進めば、(長期金利が下がって)株式・国債価格が上昇するはず。

でも、既に長期金利の利回りがゼロに近づき(最低で0.3%まで低下)し、これ以上、金利が下がりにくくなる現象が起こりました。

本当なら国債価格があがってポートフォリオのリターンを押し上げる局面だったのに、金利がゼロまで金利が低くなってしまうと国債の魅力がなくなってあまり買われなくなり、ポートフォリオのリターンが伸び悩みました。

加えて、アメリカ政府が大規模な景気刺激策を計画していることがニュースになり、国債が大量に発行されることを懸念して国債が売られる動きが出ました。

>>【参考記事】米国債を売ろうと考えています。米政府、1兆ドル超えの経済対策検討を受けて。

ゼロ金利が近づくと「国債の魅力がなくなって国債の価格上昇が鈍くなる」、「金利引下げができなくなった中央銀行に変わって、政府が景気刺激策を打ち、国債を大量発行するため、国債の価格が下がる」の2つが働いて、オールシーズンズのリターンが落ちる恐れがあることがわかりました。

オールシーズンズ・ポートフォリオのメリット・デメリットまとめ

今までオールシーズンズ・ポートフォリオで見えてきたデメリットについて触れましたが、この記事の最後に、オールシーズンズ・ポートフォリオメリットとデメリットをまとめておきます。

オールシーズンズ・ポートフォリオの特徴

  • 【メリット】:景気後退の懸念が高まって株が急落する局面でも、ほとんど資産が減らない。
  • 【デメリット】:株高の状況では、株100%のポートフォリオよりもリターンが劣る。ゼロ金利では資産が減少する恐れがある。

さらっとデメリットの点に、「株高の状況では、株100%のポートフォリオよりもリターンが劣る」と今まで触れていない話を入れ込みましたが、「レイダリオが個人投資家に推奨するオールシーズンズ・ポートフォリオ」という記事で、既に触れている点なので割愛します。

この記事では、オールシーズンズ・ポートフォリオがゼロ金利では機能しにくいというマイナスの面について取り上げました。

ただ、難点があったとしても株の下落から資産を守る手段としては、かなり有効です。

次の景気後退局面は10年後かもしれませんが、このポートフォリオを導入するか検討する価値は十分にありそうです。また、ゼロ金利が近いときには、オールシーズンズ・ポートフォリオを解除する選択肢も頭に入れておいたほうが良いかも知れません。


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