前回の記事で、この数日の株の下落の背景に長期金利の上昇があること、来年からは政策金利の引き上げもあるのでアメリカの長期金利は時間をかけて2.3%くらいまで上昇するかもしれないということを書きました。
じゃあ、米国株の投資家はどうしたらいいのでしょうか。
一番シンプルな解決方法は下落を気にせずに保有で良いと思います。
過去に同じようなことがあったことを振り返ると、政策金利が上がる時期に長期金利は急上昇したときには、確かに株価は乱高下するのですが、年単位で見ると株は上昇しているからです。
この記事のポイント
- 2021年9月現在、長期金利が上昇する中でも株に投資を続けて問題ないと考えている。一時的に株価が下落しても、しばらくすれば上昇することを期待。
- 似たような時期は過去2016年から2018年にもあった。この間に長期金利は上昇し、株価も乱高下ありながらも結局は上昇している。
- むしろ、これからの数年は長期金利が大きく下がり始めたら注意。投資家が景気の悪化を心配している場合には、株も下落する。
ジッと待つのも作戦の一つ
長期金利が急に上昇すると、割高な銘柄から売られる動きがよく見られます。
こういう局面では、「持っている株を売って、現金化したほうが良いかな」とか、「長期金利が上昇したら利益が出る金融商品でも買おうか」など、いろいろと考えが頭に浮かびます。
攻め時と守り時を分かっていて切り替えが上手な投資家ならどう動いていも良いのですが、そうでなかったり、私のようにタイミングを読むのがあまりうまくない投資家は、今回の株価下落ではあまり動かなくでジッとしているのも作戦だと思います。
2021年のような不況から脱した後(金融緩和の縮小が起こっている時期)には長期金利の上昇する時期があるのですが、過去のデータを見るとその時期は一時的な株価下落はあっても、結局は株価は上昇する動きが見られるからです。
2016年から2018年は金利上昇で株価も上昇
2016年から2018年を例に、長期金利と株価(S&P500)の動きを見てみます。
この頃はリーマンショックでゼロにまで下げていた政策金利をゆっくりと引き上げていた時期で、その影響を受けて長期金利(青線)は上昇していました。
上の図でピンクで四角く塗った箇所のように、長期金利が急上昇している時こそS&P500(赤線)の株価も下げているのですが、全体的には上昇を続けています。
来年2022年のアメリカも政策金利を上げるので、これから2016年から2018年のような展開になるはずです。
金利が急上昇している時期は株価が下がりますが、1-2年くらいの期間で見れば株価は上昇するだろうと私は思っています。
これからは長期金利が大きく下がったら注意
2018年に米国株を投資していた人は、まだ鮮明に覚えていると思いますが、上で紹介したグラフにはまだ続きがあります。
先ほどのグラフの約1か月ほど未来まで表示してみると、2018年末から2019年1月にかけて長期金利とともに急速に株価が下落しているのがわかります。
長期金利が上がっている局面では、むしろ大きな長期金利低下を警戒したほうが良いかもしれません。
長期金利の低下の背景が重要
実は、上のグラフを見ても長期金利が低下している場面は何度かあります。具体的には、2017年4月から7月を見ても、長期金利は低下しています。
しかし、このときには株の下落は起こらないで、2018年のときには株の下落が起こりました。この違いは何でしょうか。
私の考えでは、2018年末は次の不況(景気後退)が近いことを投資家が警戒して長期金利が下がったことが影響していると思います。
次の不況が近づくと10年国債の利回りと2年国債の利回りの差がゼロに近づいて、やがてマイナスになることが知られています。2017年4月にはまだ+1.0%もあったので不況は遠かったのですが、2018年末にはわずか+0.2%と不況がかなり近づいていました。
まとめ
来年からアメリカは政策金利が上昇するので、それにつれて長期金利も上昇すると思っています。
私の考えでは、これからの米国株の展開は2016年から2018年の動きと似ていて、長期金利が急上昇する場面では株も売られるのですが、全体的には緩やかにS&P500は上昇するだろうと考えています。
気をつけるべきは、むしろ急激に金利が低下した場合です。投資家が近づきつつある不況を心配しているような状況では、株価も急激に下落する恐れがあります。
不況が近づいているかどうかは、10年国債と2年国債の利回りの差がゼロに近づくなどの有名な確認方法があるので、長期金利が急低下したり異変が見られた場合には要チェックです。
ちなみに今の10年国債と2年国債の利回りの差は+1.23%もあるので、今直ぐに長期金利が低下しても特に心配はいらないと思います。むしろ、買いのチャンスかもしれません。
というわけで、2021年9月時点ではまだしばらく米国株に投資できるだろうと考えています。
もしも、この数日の株価の値下がりが大きくて見ていられないなら、投資している銘柄がリスクを取りすぎている場合があります。
米国株の幅広く投資できるVTIや世界中の企業の株に一度に投資できるVTといったバランスの良い銘柄に変えたりするのも良いかもしれません。VTIやVTなどでも下落がキツイと感じる場合は、現金比率を少し高めるのも手だと思います。